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なぜ「づ」は zu なのか?——パソコンの「du」と世の中の「zu」の食い違いを解明する

ローマ字入力のdu(tedukuri)と、看板やパスポートの表記zu(Numazu、Kozuka)の食い違いを象徴する比較イメージ

パソコンで「手作り」と打つときは tedukuri と指が動くのに、ふと見上げた「沼津」の看板は Numazu
パスポートの氏名欄を見れば「小塚」が Kozuka と綴られている。
あるいは、「続く」という文字が tsuzuku となっている……。

こうした「入力」と「表記」の微妙なズレに、小さな違和感を覚えたことはないでしょうか。

一見すると些細な違いですが、調べてみるとそこには単なる綴りの問題だけではない、日本語の歴史と合理的なルールが隠されていました。
今回は、この「zu」と「du」の食い違いの正体を紐解いていきます。

目次

1. 混同の原点:なぜ「ズ」の音に2つの文字があるのか

私たちが「ず」と「づ」の使い分けに迷うのは、現代の標準的な日本語において、この2つが全く同じ音(ズ)として発音されているからです。

しかし、歴史を遡ると、これらはもともと別の音でした。
江戸時代の初期頃までは明確に発音し分けられていたと言われています。
ところが時代を経て音が重なり、現代のように「音は同じだが、文字は2種類ある」という状態になりました。

江戸時代から現代にかけて「じ・ぢ・ず・づ」の4つの音が2つの音へと統合された歴史(四つ仮名)を示すフローチャート
【補足】四つ仮名(よつがな)とは

「じ・ぢ・ず・づ」の4つの文字のこと。
かつてはすべて別々の発音でしたが、現代では「じ=ぢ(ジ)」「ず=づ(ズ)」と、それぞれ2つずつ同じ音に統合されました。
音は同じになっても、単語の成り立ちを区別するために、現在も書き分けのルールが残っています。

2. 「づ」と書くべき時の使い分けルール

音が同じになっても、現代の国語施策(「現代仮名遣い」)では、特定の条件下で「づ」や「ぢ」を使うよう定めています。
これには、日本語としての「言葉の構造」を守るという意図があります。

ケース具体例理由
同じ音が続くときつづく(続く)、つづり(綴り)同じ音の繰り返し(畳音)による変化
言葉が結合したときてづくり(手作り)、はなぢ(鼻血)「作る(つくる)」「血(ち)」という元の言葉が明らかなため

パソコン入力において dudi が使われ続けているのは、こうした「言葉の構造」に基づき、特定の文字を正確に指定するための、いわば機能的なコードとしての役割を担っているからです。

3. 表記のスタンダード:ヘボン式と訓令式、そして「令和の改定」

では、なぜ世の中の看板は zu に統一されているのでしょうか。
そこには「ヘボン式」と「訓令式」という2つの方式の対立がありました。

ヘボン式

「耳に聞こえる音」を重視。
外国人への伝わりやすさを優先するため、音の同じ「ず・づ」はどちらも zu と書きます。

訓令式

「五十音図の構造」を重視。
タ行のウ段だから du と書く、という論理的な整合性を優先したルールです。

音を重視するヘボン式(shi)と、五十音図の構造を重視する訓令式(si)の設計思想の違いを比較した解説図

【比較】ヘボン式と訓令式の主な違い

かなヘボン式 (一般表記)訓令式 (五十音図準拠)備考
し / ち / つshi / chi / tsusi / ti / tuヘボン式は英語の発音に近い
じ / ぢji / jizi / diヘボン式は音を優先
ず / づzu / zuzu / du入力ソフトは訓令式に近い
fuhuハ行の整合性は訓令式

【2024年の重要トピック:70年ぶりのルール改定】

日本では長らく、1954年の内閣告示により「訓令式」を正式なルールとしてきました。
しかし、パスポートや駅名標など、実社会では「ヘボン式」が圧倒的に普及しているという実態がありました。

この乖離を解消するため、文化審議会は2024年、公的な表記ルールを実態に合わせて「ヘボン式」を基本とする方針を固めました。
これにより、今後は教科書なども含め、より一層「づ=zu」という表記が公的なスタンダードとして一本化されていくことになります。

まとめ

パソコンで入力する際には、du や di を入力しないと「づ」「ぢ」が出てこないため、ずっとそれらを使うものだと思っていました。
ですが今回調べてみて、入力は「文字を指定する仕組み」であり、表記は「音を伝えるルール」である——この違いをはっきり理解できました。

長らく続いていた方式の二重構造も、最新の改定によってヘボン式を基本とする方向へ整理されつつあります。
日常の些細な違和感の裏には、日本語の歴史と、社会の要請に応じた制度の変化が凝縮されていたのだと気づかされた、良い機会でした。

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