混雑とマーケティングが作った“お祭りの日”
アメリカのニュースや通販サイトでよく見かける「ブラックフライデー」。
日本でも11月になると、あちこちでこの言葉を目にするようになりました。
でもあらためて考えると、
- そもそも いつ・どんな日 のこと?
- なぜ “ブラック(黒)” フライデー なんてちょっと物騒な名前なの?
- どうやって 日本にも広がった の?
この記事では、ブラックフライデーの意味や由来、日本でどう広まったかを「3分でざっくり」つかめるようにまとめました。
ブラックフライデーって何の日?
ブラックフライデーは、アメリカの感謝祭(Thanksgiving Day)の翌日、つまり「11月第4木曜日の次の金曜日」にあたる日です。
この日は、
- クリスマス商戦のスタートライン
- 一年でいちばんお店が混雑しやすい日
- 家電やおもちゃ、ファッションなどが一斉に値下げされる“大セールの日”
として知られています。
感謝祭当日は、家族や親戚とターキーを囲む「団らんの日」。
お店も休業や短縮営業が多く、買い物の日というより“家で過ごす日”です。
その反動もあって、翌日の金曜日に人と車が一気に街へ出てくる――
ここから、あの「ブラックフライデー」という呼び名が生まれていきます。
「ブラックフライデー」という名前の意外な由来
もともとは“厄介な日”を指す言葉だった
いまでは「お得なセールの日」のイメージが強いブラックフライデーですが、もともとはかなりネガティブなニュアンスを持っていました。
1950〜60年代のアメリカ・フィラデルフィア。

感謝祭の翌日には、
- 感謝祭明けの買い物客
- 週末に行われるアメリカンフットボール(陸軍対海軍戦)の観客
が一気に押し寄せ、道路も歩道も大渋滞。
警察やバス運転手にとっては仕事が増え、事故も増え、とても「ハッピー」どころではありません。
そこで地元の警察官やメディアが、この大混雑の日を
Black Friday(真っ黒な金曜日)
と呼び始めたと言われています。
「ブラック=不吉・よくない状態」という英語表現は、過去の金融恐慌(株価大暴落の日)などにも使われてきました。
その延長線上で、生まれた呼び名だったわけです。
「赤字から黒字へ」はあとからついた“物語”
ところがこの呼び名、小売業界からすると 一年で最も売り上げが立つ大事な日 にネガティブなラベルが貼られている状態です。
そこで1980年代になると、小売側はこんな“前向きな解釈”を広め始めます。
1月〜11月のあいだは赤字(red)だった帳簿が、ブラックフライデーの売り上げで黒字(black)になる。だから「ブラックフライデー」なんだ。
帳簿の赤字を赤インク、黒字を黒インクで書く慣習から来た説明ですね。
実際には「赤字→黒字」の話は後づけのストーリーですが、この物語が浸透したことで、
ブラックフライデー = 大渋滞で大変な日
から
ブラックフライデー = お店が黒字になるほど売れる、大セールの日
というイメージへ、少しずつ上書きされていきました。
そもそも、なぜ“翌日”がそんなに混雑するのか?
感謝祭当日ではなく、なぜ翌日の金曜日なのでしょうか。
理由はいくつか重なっています。
- 多くの企業や学校では、感謝祭翌日の金曜も休みになる
→ 4連休のスタートとして、買い物に出る人が増える - 感謝祭が終わると、気分は一気にクリスマスモードへ切り替わる
→ プレゼントや飾りつけの買い出しが始まる - 小売側も「このタイミングで一気に売りたい」ため、
→ この日に狙いを定めてセールを仕掛ける
アメリカでは、1930〜40年代から「感謝祭後はクリスマス商戦」という感覚が定着しており、F.D.ルーズベルト大統領が感謝祭の日付を動かしてまで“ホリデー商戦期間を長くしようとした”というエピソードもあるほどです。
そうした背景もあって、「感謝祭翌日の金曜日=一年で一番混雑する買い物の日」になっていったわけですね。
日本にブラックフライデーがやって来たのはいつ?

きっかけを作ったのはトイザらス
日本で「ブラックフライデー」という言葉が売り場に並び始めたのは、2010年代半ばごろです。
2014年にトイザらス(Toys “R” Us Japan)が、日本で初めてブラックフライデーセールを実施したとされています。
当初は「アメリカのセール文化を日本でも」という、やや実験的な試みでしたが、おもちゃ・ベビー用品の値引きということもあり、子どもを持つ家庭を中心に少しずつ認知されていきました。
一気に広げたのはイオン
その流れを大きく広げたのがイオングループです。
2016年ごろから、イオンモールや総合スーパーで「ブラックフライデー」セールを大々的に展開。
黒い買い物袋や、店内を黒×黄色のポスターで埋め尽くす演出など、視覚的にも「ブラックな感じ」を前面に押し出しました。
テレビCMやチラシ効果もあって、このあたりから日本でも「11月になるとブラックフライデーって言ってるな」と感じる人が一気に増えたのではないでしょうか。
日本版ブラックフライデーの“らしさ”
日本のブラックフライデーは、アメリカと比べると
- 期間:
→ 当日だけでなく 1〜2週間にわたってセールを行う ことが多い - 雰囲気:
→ ドア前に長蛇の列ができるような“お祭り騒ぎ”というより、ポイント還元やネット通販中心の、落ち着いたセール - 参加企業:
→ イオン、Amazon、楽天、家電量販店、アパレルなど幅広い小売が参加
といった特徴があります。
アメリカのように「命がけでテレビを奪い合う」というより、日本版は “ちょっとお得な11月のセールイベント” として静かに根づきつつある、といった印象です。
「ブラックフライデー」って何の日?
— Beyond 好奇心 (@beyondkoukishin) November 24, 2025
アメリカの感謝祭の翌日、11月第4木曜の次の金曜日に行われる大セールの日。
1950〜60年代のフィラデルフィアでは、人と車で街が真っ黒になるほど混雑し、警察や新聞がその日を “Black Friday” と呼んだと言われます。#今日の豆知識 #Beyond好奇心 pic.twitter.com/fydOZWVDkp
ブラックフライデーのちょっとした豆知識
最後に、記事を読み終えたあとに誰かに話したくなる “小ネタ” をいくつか。
- もともとは警察やバス会社の“愚痴”から始まった言葉
→ 渋滞と人混みで「真っ黒な金曜日だ!」と呼ばれ始めた。 - PR担当者が「ブラックじゃ印象悪いから、ビッグフライデーにしよう」と提案したこともある
→ けれど、ほとんど定着せず、ブラックフライデーが生き残った。 - “赤字から黒字へ” 説は、1980年代に広まった“イメージ戦略”
→ 帳簿の色にちなんだ後づけの由来だが、今ではこちらの説明の方が有名に。 - 日本では2014年のトイザらスが“最初の一歩”、イオンが“火付け役”
→ その後、アパレルやネット通販も参入し、11月の恒例イベントになりつつある。
この記事の要点
- 元は混雑だらけの厄介な日を指す言葉
- 小売のイメージ戦略で“セールの日”の意味が強くなった
- 日本ではトイザらスが最初、イオンが火付け役
ブラックフライデーの歴史を振り返ると、おもしろいのは、同じ言葉でも「誰が、どんな文脈で使うか」でイメージが変わっていく という点です。
- 警察にとっては「勘弁してくれ、真っ黒な金曜日」
- 小売業界にとっては「赤字から黒字に変わる、ありがたい金曜日」
- いまの私たちにとっては「ちょっとワクワクするセールの日」
ネガティブな言葉から始まったものも、物語や使い方次第で、ここまで印象が変わる。
そんな視点でニュースや広告を眺めてみると、また違った「言葉の裏側」が見えてくるかもしれません。
今回はブラックフライデーを取り上げましたが、ほかにも「名前の由来を知ると見え方が変わる行事」はたくさんあります。
次は、ボジョレー・ヌーヴォーや国産ジーンズの“裏側”も、好奇心のルーペでのぞいていきたいと思います。
もしこの記事が「へぇ」と思っていただけたら、Xの @beyondkoukishin(Beyond 好奇心) でも、日々の「なんで?」をゆるくメモしています。



